食事と図書 雨風食堂

2025-12-27

「みんなのごはん」刊行記念
チャン・アラさん、内藤かほりさんお話会
ありがとうございました!

12月20日(土)、本屋「文室」にて、韓国で独立書店と出版スタジオを営むチャン・アラさんと著者の内藤かほりさんをお迎えし、「みんなのごはん」刊行記念トークイベントを開催しました。アラさんの出版スタジオの門出となった本作。その最初の海外イベントを、高知の小さな個人書店である文室で開催させていただくことになったことは、今でも本当に不思議で、ありがたいご縁だったと感じています。

1部では、舞台裏の写真や動画をたくさん見せてくださり、本作りの裏側を覗かせていただきました。料理に関心の高い方が多く、質問もたくさん出て、終始あたたかい雰囲気で進行する中、料理をきっかけに思わぬところからふたつの国の文化や言葉の違いが浮かび上がるのも印象的でした。「きつね色」という表現の話から、お稲荷さんの名前の由来の話になり、「たぬきは何色ですか?」というアラさんの質問にみんなで笑ってしまったり。

2部では「みんなのごはん」に掲載されているかほりさんのレシピから「のっぺい汁うどん」をご用意させていただき、優しい味のおうどんでお腹を満たしてから、本の話から少し離れてお二人の生き方、考え方について話を広げていきました。

お二人の出会いから、国や言葉の違いを越えて友人になられた経緯、韓国の出版事情や、SNSとの付き合い方まで。参加者の方も思ったことをいつでも自由に質問できる自由なスタイルでしたが、どの話題からもお二人それぞれの個性やスタンスが自然に滲み出ていたように思います。

会が終了し、夜が更けても多くの方がそのまま残って話は尽きず……

翌日、メモ帳を見るとその形跡が。

いったいどんなお話をされていたのでしょうか。

* * *

アラさんのお名前は韓国の古い言葉で「海」の意味を持つそうです。お名前の通りその眼差しは、あらゆる境界や隔たりを軽やかに越えているように見えました。言葉が分からなければ習得し、本の作り方が分からなければ印刷所に尋ね、会いたい人には会いに行って。遥か遠くを見ているようでいながら、人が見過ごしてしまうような良さに気づき、その良さを伝えるために、丁寧に、果敢に、一冊の本という形にしていく。そして、自ら書店という場を作り、直接手渡していく。ご一緒したのは2日間の短い間でしたが、後ろからかほりさんを見守る眼差しやご家族への愛情を言葉の端々から感じ、その原動力は野心というよりも、愛情に近いものなのかもしれないと思いました。


通りすがりのワンちゃんが一直線にアラさんのもとへ

また、出版スタジオとして船出をされるにあたり「一冊目の本は信じられる友人と作りたかった」というアラさんの言葉も心に残っています。実際にかほりさんとお会いして、自然体で周りの人を和ませてくれる柔らかい空気の奥に、しっかりと芯を持った方なのだと感じました。「みんなのごはん」はこんなお二人によって丁寧につくられたやさしいレシピ本ですが、当日のお二人の様子を見て、参加者の皆さんもこの本がどのようにして生まれたのか、言葉以前に感じ取れる部分が多くあったのではないでしょうか。

イベントから一週間が経ち、参加者の方々から次々とご感想をいただいていますが、今までで一番アットホームだったというお声と、「とても刺激を受けた」というお声が多く届いています。私自身、なぜ本屋という場所を作ったのか、なぜイベントを開催するのかということを、今一度考えてみる良い機会になりました。

本という静かで動かないものを取り扱ってはいますが、ずっと「本は人です」と口癖のようにお伝えしてきました。結局、本を介して、人を紹介したいのだろうと思うのです。自分の生活圏のすぐ隣に、こんな人がいるのだと。

本を紹介した時点ではそのたった一歩目、それでも大きな一歩ではありますが、実際に書いた人、作った人に会ってみることが千倍くらいの意味を持つことがあります。
その瞬間が実現するためには、場をひらく人がいて、ゲストとしてお越しくださる方と、会いに来てくださる方々、その皆さんがそれぞれに何もわからない段階で、先に主催者を、ゲストを、お客さんを、人を「信じてみる」必要があります。

まず、信じてみる、会いに行ってみる。その先にしか生まれない、あたたかな連鎖。
かほりさんのレシピの優しい味のおうどんを啜りながら、その実践を、お二人と皆さんに見せていただいたような夜でした。この小さな一夜の交流からそれぞれの人生の角度がほんの少し変わったであろうことを思い、そのズレがどんな変化になっていくのか、これからまた楽しみです。

* * *

今回、イベントの記念品として、ホリナルミさんのイラストがかわいいポストカードセットとハンドタオルをご用意くださいました。
初回特典のカレンダーも、大手ショッピングサイトからの購入では入手できない小さな書店のみの特典なのだそうです。(愛!)